• SBS創立20周年特別企画ドラマとして制作された『ジャイアント』。2010年5月から放送が開始されたが、同時間帯ではイ・ビョンフン監督の『トンイ』がすでに好調な数字を記録し先行していたことから、序盤こそ10%台の視聴率に甘んじていた。だが、回を追うごとにじわじわ視聴率が上昇。8月に入り25話辺りからほぼ並び、徐々に『トンイ』を追いつめていき、抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げる。人気を受けて当初50話予定だったものが10話延長され60話まで延長されたが、ついに最終回では、最高視聴率40.1%をたたき出した。その年のSBS演技大賞では最優秀作品賞をはじめ、9部門で13人が受賞する快挙を達成。2010年の韓国を代表する国民的ドラマの地位を獲得した。

  • 父親を殺された兄妹の復讐物語というだけでも十分面白いのだが、そのメインストーリーにいくつものドラマチックなエピソードが重層的に織り込まれ、次を見ずにはいられないストーリー展開が待ち受ける。離ればなれになった兄妹3人はいつ再会できるのか、主人公ガンモが数々の障害を乗り越え企業家としていかに成功していくのか、ガンモとジョンヨン、妹ミジュと仇の息子ミヌの切ないラブストーリーの行方は? そしてピリョンへの復讐はどのような形で決着を迎えるのか…などが恐るべき緻密さで描かれ、見る者をがっちり掴んで離さない。「一体この後はどうなるのか!?」と身悶えするほどの面白さ。

  • 随所に伏線を張り巡らせ計算し尽くされたシナリオをさらに面白く、リアリティに満ちた作品として作り上げたのはスピード感溢れる演出の力によるところも大きい。韓国の高度経済成長時代、史実に基づいた政治的な事件や出来事を巧みに取り入れながら、土地開発に絡んだ政治と金と権力闘争をダイナミックに、テンポ良く描き出しながら、家族の絆や愛と野望といった人間の普遍的なドラマを感情豊かに描き出すことで、1話終わるごとにカタルシスを味あわせる、「次が気になってしょうがない」、超一級のエンターテイメント作品に仕上がった。

  • 日韓共に言えることだが、ドラマの主たる視聴者層は女性。それだけに、韓国では昔から「男性視聴者を獲得したドラマはヒットする」と言われており、これまでにも『砂時計』や『野人時代』、そして国民的大ヒットを記録した『朱蒙』など、過酷な時代や運命に翻弄され、虐げられながらも大きな目標を達成していく主人公のドラマが高い人気を得てきた。主人公イ・ガンモは、父親を殺された復讐のために敵と相対するが、その実は不正と腐敗にまみれた現代社会に敢然と挑戦し、あらゆる苦難を果敢に乗り越え目標を達成していく。家族を愛し、裏切った仲間をも赦して受け入れるその姿は、勧善懲悪、まさに新たなるヒーローの登場を感じさせた。60話の大河ドラマの主役として最後まで作品を引っ張ったのは、イ・ボムス。演技力には以前から定評があったが、本作ではさらにカリスマが増し、ヒットの立役者となった。実はこのガンモ役、当初は『白い巨塔』『ベートーベン・ウィルス』のキム・ミョンミンにオファーされていた。だが、ガンモの役柄設定がイ・ミョンバク大統領を思わせるとして、現政権讃美的な要素があるのでは、とうがった見方も出たことからキム・ミョンミンが降板。その後を受けたイ・ボムスはユ・インシク監督から「彼以外に考えられない」と言われる名演を見せた。

  • 超大作の中であっても欠かせないのがラブストーリー。ガンモ&ジョンヨン、ミジュ&ミヌという2つのカップルの、共に「ロミオとジュリエット」のような切ない恋模様がドラマのもう一つの見どころとなっている。中でも、ガンモをことあるごとに妨害するミヌが、天使のようなミジュによって次第に変わっていく姿には多くの女性視聴者が熱狂。ミヌ役のチュ・サンウクは冷酷で卑劣な面を持ちながら、ミジュに対してだけは純粋な愛を貫き通すという、ある種二面性のあるキャラクターを演じ切り、一気にブレイクした。

  • 多くの演技巧者が脇を固める本作。中でも諸悪の根源であるチョ・ピリョンを演じたチョン・ボソクの演技が素晴らしい。眼差しや表情、声のトーンどれ一つとっても冷酷極まりない非情な悪人の姿を見事に表現している。最後まで“悪”であり続けるその姿勢に清々しささえ感じられるのは彼の名演によるところが大きい。もっとも感情を揺さぶられたと評価された兄弟の長兄イ・ソンモ役のパク・サンミン、そして、心ならずも親友を裏切るファン・テソプ役のイ・ドクファも、人間味溢れる役どころをベテランならではの味わい深い演技で見せてドラマを引き締める。他にも錚々たる顔ぶれが揃って物語に説得力を与えている。

  • 60話中、最初の8話に登場した子役たち。『イルジメ[一枝梅]』でイ・ジュンギの子供時代を担ったヨ・ジングがガンモに、『善徳女王』でイ・ヨウォンの少女時代を演じたナム・ジヒョンがジョンヨンに扮し大人顔負けの名演技を披露。ミジュにはまだ8歳というパク・ハヨンが扮し、親を亡くした健気な少女の演技を好演した。ミヌの少年時代を演じたノ・ヨンハクも『イルジメ[一枝梅]』『善徳女王』等で子役として活躍してきた有望株。そして、若きソンモを演じたキム・スヒョンがすでに子役とは言えない堂々たる演技を見せる。早くから注目されていた彼は、本作の後『ドリームハイ』の出演で大ブレークを果たした。